2015_コンセプト

13th Art Program Ome 2015
アートプログラム青梅

感性を開くー一人ができること

 

身近な携帯電話でも、全方位システムの要である人工衛星でも、モノの生産 には多くの人が関わっている。設計者がいて、部品を加工する人がいて、そ れらを組み立てる人がいる。私たちの身の回りにあるモノは、科学技術に裏 付けされた特別のものでなく机や椅子であっても、人がより効率的に、快適 に生活できることを目的に、多くの人の手を経てつくりだされる。 ところが、アーティストと呼ばれる人たちの作品 ( 製品 ) は、おおむね一人で つくられる。中には、業者に発注して仕上げる人はいるが、その原型を構想 することにおいて、本人が責任を負っていると言ってよいだろう。そしてそれ は「快適に」という言葉に多少触れることはあっても、「効率的に」という言 葉とは無縁である。とすれば何を目論んでいるのだろうか。 私たちの住んでいる世界には、例えば、様々な植物が生息していて、その葉 がなぜこんなに多種多様な形をしているのか、枝振りをしているのか、不思 議に思う。アーティストはそんな何か、今まで日常の忙しさにかまけて見過 ごしていたこと、新たな関係、あるいはまた人の内面の諸相や不条理に気付 こうと努力しているのだろうか。人が本来持っている原初的な「描く」、ある いは「つくる」という衝動や感覚。それを素にして、言葉では掬いきれない 何ものかを、他者に見え、感じられるようにする。新たな感性を開こうとして いると言ったらよいのだろうか。それは、あくまで個の力を信じた一人によ る手作業なのだ。
 

大橋紀生

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